睡眠負債を解消する方法!寝不足がもたらす体への影響とは?

睡眠負債とは、必要な睡眠時間を確保できずに、少しずつ睡眠不足が蓄積していく状態を指します。
一時的な寝不足とは異なり、慢性的に睡眠時間が足りない日々が続くと、疲れが抜けにくくなるほか、免疫力の低下など心身の不調にもつながります。
睡眠負債を解消するには、適切な睡眠時間を確保し、生活リズムを整えることが重要です。
この記事では、20~60代の方を対象に睡眠に関するアンケート調査を実施し、睡眠負債の現状を分析しました。
その結果を踏まえ、睡眠負債の原因と解消方法について詳しく解説します。
毎日の疲れをしっかりリセットし、日中のパフォーマンスを向上させたい方は、ぜひ参考にしてください。
睡眠負債とは?

睡眠負債とは、必要な睡眠時間が不足した状態が慢性的に続き、体や心に悪影響を及ぼす状態を指します。
単なる一時的な寝不足とは異なり、少しずつ積み重なっていくため、自覚しにくいのが特徴です。
例えば、理想的な睡眠時間が7時間の人が毎日6時間しか眠れないと、1日で1時間の睡眠不足になります。
これが1週間続くと、合計7時間の不足となり、一晩まるごと徹夜したのと同じ影響を体に与えます。
こうした積み重ねが「負債」となり、体の疲労や脳の機能低下を引き起こすのです。
今回、睡眠負債の実態を把握するために独自のアンケートを実施したところ、回答者の睡眠時間は平日は5.5時間、休日は6.5~6.6時間という結果になりました。

さらに厚生労働省が公表した「令和5年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、20歳~59歳の世代では睡眠時間が6時間未満の人が約47%、5時間未満の人も約11%と、睡眠時間が短い人が約7割を占めています。
また、日本の平均睡眠時間は世界的に見ても短く、経済協力開発機構(OECD)加盟国30ヶ国の中で最も短いというデータもあります。
これは、日本人の多くが慢性的な睡眠不足、いわゆる「睡眠負債」を抱えている可能性を示しており、健康や日常生活への影響が懸念されています。
調査データ 調査対象:20~60代の男女10人 調査内容:睡眠についてのアンケート 調査方法:インターネット調査 調査期間:2025年1月20日~1月25日 |
参考:「令和5年国民健康・栄養調査結果の概要」 (厚生労働省)、「Gender Data Portal 2021」(経済協力開発機構)
睡眠負債の原因とは?

睡眠負債の原因は一つではなく、生活習慣や環境、社会的要因が複雑に絡み合っているのが特徴です。
睡眠負債を解消するためには、まず自分の生活の中にある問題点を見つけることが大切です。
睡眠負債は、以下のような原因が挙げられます。
- 睡眠時間が足りていない
- 就寝や起床時間がバラバラ
- 過剰なストレスを受けている
- 睡眠環境に問題がある
睡眠時間が足りていない
私たちが日常的に抱える睡眠負債の根本的な原因は、必要な睡眠時間を十分に確保できていない点にあります。
厚生労働省は「健康づくりのための睡眠ガイド2023」で、成人における適正な睡眠時間として1日6~8時間を推奨しています。
しかし実際には、アンケート結果からも読み取れるように多くの人がこの基準に達していません。
平日・休日ともに必要な睡眠時間を下回る人が多いことが明らかになっています。
現代社会では、仕事や学業、家事などで日々の生活が忙しく、睡眠の優先度が低くなりがちです。
その結果、睡眠不足が積み重なり、まるで借金のように解消が難しくなる状況が生まれています。
参考:「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(厚生労働省)
就寝や起床時間がバラバラ
毎日の就寝や起床時間が一定でないと、体内時計が乱れるとともに睡眠の質が低下し、睡眠負債がたまりやすくなります。
特に、平日と休日で生活リズムが大きく異なると、体の調整がうまくいかず、寝つきが悪くなったり、朝スッキリ起きられなくなったりするため注意してください。
今回実施したアンケートでは、睡眠負債の原因として約40%の人が「生活リズムの乱れ」を挙げていました。
この結果からも、睡眠負債を防ぐためには、規則正しい生活習慣が重要だとわかります。
過剰なストレスを受けている
過剰なストレスは、自律神経のバランスを崩し、睡眠の質を低下させる大きな要因となります。
自律神経は、心拍や呼吸、体温調節などをコントロールし、体のリズムを整える重要な働きを持ちます。
しかし、ストレスが過剰にかかるとこのバランスが乱れ、体を活発にする交感神経が優位な状態が続いてしまいます。
その結果、脳が興奮したままとなり、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりして、睡眠負債が蓄積しやすくなるのです。
編集部が実施したアンケートでは、睡眠負債の原因として約20%の方が「ストレス」と回答しており、多くの人がストレスによる睡眠の質の低下を実感しているのがわかりました。
参考:「知っているようで知らない睡眠のこと」(厚生労働省)
睡眠環境に問題がある
睡眠の質は、寝室の環境によって大きく左右されます。
快適な寝具を整えることはもちろん、室温、光、音などの環境が適切でないと、深い眠りが妨げられ、睡眠負債が蓄積しやすくなるので注意が必要です。
中でも特に注意したいのがスマホやパソコンのブルーライトです。ブルーライトには体内時計に影響を与える短い波長の光が多く含まれており、寝つきが悪くなる原因となります。
寝室にはできるだけスマホやタブレット端末を持ち込まないようにして、リラックスできる環境に整えましょう。
参考:「快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係」「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」(厚生労働省)
睡眠負債による短期的な体への影響

睡眠負債は短期間でも、体や脳にさまざまな悪影響を及ぼします。
特に、仕事や勉強のパフォーマンスが低下しやすくなり、日常生活にも支障をきたすため、早めの対処が必要です。
適切な睡眠時間を確保し、負債を蓄積させない習慣が健康維持の鍵です。
・集中力・判断力の低下
睡眠不足により脳の働きが鈍くなり、注意力が散漫になったり、適切な判断がしにくくなります。
・記憶力の低下
睡眠中に行われる記憶の整理が不十分になり、新しい情報を覚えられないなどミスが増えることがあります。
・イライラや気分の落ち込み
心身のリズムを整える自律神経が乱れ、ストレスホルモンが増加し、感情が不安定になりがちになります。
・免疫力の低下
体を守る免疫機能が弱まり、風邪をひきやすくなるなど、体調を崩しやすくなります。
参考:「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」(厚生労働省)
睡眠負債による長期的な体への影響

短期的な睡眠負債であれば、生活習慣の改善によって回復が見込めます。
しかし、睡眠負債が長期間溜まると健康リスクが増大し、さまざまな病気の原因となるため注意してください。
特に、自律神経が乱れた状態が続くことにより、以下のような心身の不調を引き起こす可能性があります。
・生活習慣病のリスクが高まる
睡眠不足は、体のリズムを整える自律神経が乱れ、血圧や血糖値のコントロールが困難になります。
糖尿病や高血圧になりやすくなり、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気を引き起こす可能性も上がります。
・太りやすくなる
睡眠不足は、食欲を抑えるホルモン「レプチン」を減少させ、食欲を増やすホルモン「グレリン」を増加させます。
その結果、過食しやすくなり、さらに代謝も低下するため、太りやすくなります。
・ストレス・うつ病のリスクが上がる
睡眠不足になると、ネガティブな感情に対する脳の反応が強まり、感情の処理や記憶の形成に関与する左扁桃体の活動が過剰に活発になります。
また、心のバランスを整える物質「セロトニン」や「ドーパミン」が減少するため、不安やイライラを感じやすくなるだけでなく、うつ病や不安障害のリスクも高まるでしょう。
・肌が老けやすくなる
体の修復・再生に重要な成長ホルモンは、睡眠中に分泌され、細胞の修復や新陳代謝を促します。
しかし、睡眠不足が続くと、この働きが十分に機能せず、シミやシワ、くすみが増えてしまいます。その結果、肌の老化が進みやすくなるのです。
睡眠負債を放置すると、さまざまな健康リスクが高まる可能性があります。
健康を維持するためには、毎日一定の睡眠時間を確保し、睡眠の質を向上させる取り組みが大切です。
参考:「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」(厚生労働省)、「睡眠の量と質の不足がもたらす健康被害」(人事院)
睡眠負債を解消する方法

睡眠負債を解消するには、睡眠時間を確保するだけでなく、生活習慣の見直しが欠かせません。
毎日の習慣を整え、疲れをしっかりリセットしながら、質の高い睡眠を目指しましょう。
ここでは、具体的な解消方法を紹介します。
- 適切な睡眠時間を知る
- 昼寝を取り入れる
- 週末の寝だめは2時間以内にする
適切な睡眠時間を知る
厚生労働省では、毎日の睡眠時間を6時間以上確保することを推奨しており、健康を維持するためには十分な睡眠が不可欠です。
ただし、適切な睡眠時間は、年齢や生活習慣によって異なります。
成人後は加齢とともに夜間の睡眠時間が減少し、20年ごとに約30分ずつ短くなる傾向があります。
以下は、年齢別の推奨睡眠時間です。
15歳~ | 約8時間 |
---|---|
25歳~ | 約7時間 |
45歳~ | 約6.5時間 |
65歳~ | 約6時間 |
自分に合った適切な睡眠時間を知りたい時は、まず6.5時間を目安に設定してみましょう。
就寝時間は、起床時間を基準として逆算して決める方法がおすすめです。
たとえば、朝6時に起きる場合は、夜11時半には布団に入るようにします。
それでも日中に眠気や疲労を感じる場合は、就寝時間を30分ずつ早めながら調整し、自分にとって最適な睡眠時間を見つけていきましょう。
参考:「健康づくりのための睡眠指針の改訂について(案)」「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」(厚生労働省)
昼寝を取り入れる
昼寝は睡眠負債の解消に直接つながるわけではありませんが、認知症予防や学習効果の向上などのメリットが期待されています。
眠気が生じやすい13時から16時の間に取ると、睡眠負債による疲労を和らげ、日中の集中力を高められます。
ただし、長すぎる昼寝は夜の睡眠に影響を与えるため、15~20分程度にとどめるのが理想的です。
適度な昼寝を取り入れ、スッキリとした状態で日中を過ごしましょう。
週末の寝だめは2時間以内にする
平日の睡眠不足を補おうと、週末に長時間寝だめをする人は多いですが、2時間以内に抑えるのが理想的です。
休日に寝過ぎると平日との就寝・起床時間にズレが生じ、体内時計が狂う「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)」を引き起こす場合があるためです。
時差ボケと同じように体がリズムの変化についていけず、平日にスムーズに眠れなくなる要因となります。
その結果、週の始まりから睡眠の質が低下し、仕事や学業のパフォーマンスにも悪影響を及ぼしかねません。
週末の睡眠はあくまで軽い調整と捉え、平日にも適切な睡眠時間を確保する習慣が大切です。
無理な寝だめに頼らず、毎日の睡眠リズムを整えることを意識しましょう。
参考:「知っているようで知らない睡眠のこと」(厚生労働省)
睡眠の質を高める方法

睡眠の質は、環境、日中の活動、食事、嗜好品などの要素に左右されます。
より良質な睡眠を得るためにも、それぞれのポイントを見直し、生活習慣を整えていきましょう。
・就寝前にリラックスする
寝る前に心身を落ち着かせることで、スムーズに眠りにつきやすくなります。
就寝1~2時間前に入浴し、一度体温を上げると、寝る頃には自然と体温が下がり、眠気が訪れやすくなるでしょう。
・適度な運動を行う
日中に適度な運動を行うと、夜の寝つきが良くなり、深い眠りを得やすくなります。
特に、ウォーキングや軽いストレッチは、睡眠の質を向上させる効果が期待できます。
ただし、寝る直前の激しい運動は体を活発にさせる交感神経を刺激し、寝つきを悪くする原因になるので控えましょう。
・朝日を浴びる
朝の光を浴びると体内時計がリセットされ、夜に自然な眠気が訪れやすくなります。
朝起きたらすぐにカーテンを開け、太陽の光を浴びる習慣をつけるとよいでしょう。
特に、午前中の早い時間に外に出ると、体内時計が正常に働きやすくなります。
・睡眠の質を下げる嗜好品を控える
カフェイン、アルコール、喫煙は睡眠の質を低下させる原因です。
カフェインは強い覚醒作用を持ち、夕方以降に摂取すると寝つきが悪くなります。
アルコールは深い眠りを妨げ、夜中に目が覚めやすくなります。
また、喫煙は交感神経を刺激し、寝つきを悪化させるだけでなく、夜中に目が覚めるリスクも高める要因です。
・食事のタイミングを意識する
寝る直前に食事をすると、消化器官が活発になり、睡眠の質を低下させる原因になります。
夕食は就寝の2~3時間前までに済ませ、脂っこい食事や消化に時間がかかるものは避けるのが理想的です。
適切な食事のタイミングを意識することで、より質の高い睡眠が得られるでしょう。
このように、 ちょっとした工夫を取り入れることで、睡眠の質が向上し、日中のパフォーマンスも向上します。
自分に合った方法を取り入れ、快適な睡眠を目指しましょう。
睡眠の質に関するさらに詳しい情報は、以下のリンクからご確認ください。
睡眠の質を上げる方法!眠りが浅い原因と影響を解説
参考:「知っているようで知らない睡眠のこと」(厚生労働省)
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睡眠負債を解消するには、適切な睡眠時間を確保し、生活習慣を見直すことが大切です。
中でも就寝前のタバコは、入眠困難や浅い眠りを引き起こし、不眠症の原因になるとされています。
喫煙習慣が睡眠時間の減少を招き、睡眠負債を深刻化させる可能性があるのです。
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